前回①で触れました通り、男女別定員制は女子に不利になるケースが多いと言われています。実際には男子が不利になるケースもありますが、数としては約600名入れ替わる、というのですから、女子が不利になるケースがクローズアップされがちです。都教育庁でも、都立高校の男女別定員による合格ライン(難度)の違いは是正の必要があると感じていて、1998年から募集定員の10%について男女合同で選抜する緩和措置を実施していました。今春の入試では、都立全日制学年制普通科109校中、42校でこの男女別定員緩和が実施されています。推薦入試・一般入試とも当てはまる話ですが、募集定員が大きい一般入試の今春の入試結果で考えてみます。

 まず、定員割ればかりの島嶼部の5校を除き、男女別定員緩和を行わなかった62校の一般入試の実質倍率(実受験者数÷合格者数)は、62校を合計すると男子が1.35倍、女子は1.42倍で、女子の方が高倍率です。学校ごとでは、女子の実質倍率が男子より0.1倍以上高かったのが小山台、青山、駒場、西、竹早、北園、板橋、上野、足立、竹台、城東、松が谷、八王子北、昭和、福生、小金井北、小平南、保谷、東村山、国立、調布北、狛江の22校でした。逆に男子の方が0.1倍以上高かったのが豊多摩、両国、八王子東、日野台、小川、立川、秋留台、久留米西、調布南、府中の10校で、女子が不利になるケースが多いことがわかります。30校は差が0.1倍まで達していません。

 男女別定員緩和を実施した42校で同じ計算をすると、各校合計の実質倍率は男子が1.34倍、女子が1.35倍と、ほとんど変わりません。女子の実質倍率が男子よりも0.1倍以上高かったのが三田、広尾、松原、千歳丘、向丘、日本橋、小平の7校、男子が女子よりも0.1倍以上高かったのは雪谷、豊島、足立新田、淵江、江戸川、深川、南葛飾、清瀬、神代の9校でした。26校は差が0.1倍まで達していません。グラフに示すと次のようになります。

 定員緩和実施校では、男女の実質倍率差が0.1倍未満の学校が6割を超えますが、定員緩和非実施校では5割に達しません。また、非実施校では3割以上の学校で女子の実質倍率が男子よりも0.1倍以上高くなっていますが、実施校では2割に達せず、10%の定員緩和は、一定の成果が出ていると考えられます。むしろ、実施校では男子の実質倍率が女子より0.1倍以上高い学校が多く、全校での定員緩和の実施は、男子が不利になることが増えそうです。女子の実質倍率が高くなるのは、女子の方が毎年の人気の変動で特定校に集中する傾向が強い面もありますから、定員緩和の実施は女子の人気の変化に、男子が影響されることが増えるでしょう。